同病相憐れむ


「あと一年」医者に宣告された家族に対する介護のマニュアルは有るだろうか、どんな医学書にも書かれていなかった。
目の前で激痛にもがき苦るしむ患者、目をそらすわけにはゆかない。背をさすれば皮がすうっと動いてしまう、これだけでも死の苦しみ、手も足も口も出せない。
或る日「痛くないことはしあわせですネ」と呟いた。麻薬を使った時だけしばし痛みを忘れる。しかし麻薬を使いつづければ一年の命が半年に、三か月になってしまう。医者は使いたがらない。しかし、私は決断した。例え命が縮まろうと、のたうちまわる激痛から解放してやるのが唯一の介護、これ以外の介護はない。麻薬が効いている間の妻の癒された安らかな束の間の表情を見るのが介護者の癒しだった。私の決断に悔いはない。妻は安らかに旅立った


(大阪府・E.T/女性)