好き嫌いを押しつけない


自分がお酒を飲むのを止めて、それが身体によいと思えば、他の人にも禁酒を強く勧めるような人がいます。自然環境に配慮したエコロジーな生活を始めたら、他人も同じようにすべきだと決めつけて、やはり強く勧めてくる人もいます。気に入った健康食品を見つけたら、ことあるごとにその効果を説明して、他人に勧めようとす る人もいるでしょう。
健康によいこと、あるいは身体によいもの等を紹介しているのだ から、勧めている本人は正しいことをしていると思い込んでいます。しかし、いくらよいことでも、よいものでも、相手の趣味嗜好や考え方、生活スタイルなどを無視して強制したら、反発を買い、 人間関係を著しく損なってしまいます。同じ勧めるにしても、もう少し控えめに推奨し、受け入れるかどうかは相手の判断にゆだねるべきでしょう。
道徳的な生き方を学び、自らも実践しつつ、それを他人に勧めるときも同じです。いくら自分が正しいと信じているからといって、 相手の立場や考え方を無視して強く推奨したら、相手の反感を買っ てしまいます。相手が何を考えているか、何に重きを置いているか をよく観察しながら、相手に合わせて説明し、徐々に心を解きほく していくべきでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選