驕らず、悲嘆せず、謙虚に臨む


どんな事業(商売)でも、長く継続している間には、よいときもあれば悪いときもあります。
たまたま関わっている分野の仕事がマスコミで話題になって、 ブームが巻き起こり、急激に売上げが伸びたと仮定しましょう。当然日々忙しくなり、周囲からもてはやされ、お金もたくさん入って きます。店を広げたり、人員を増やしたり、工場を拡張したりする 場合もあるでしょう。そうなると人間という生き物は、だんだん気 が大きくなってきます。金づかいも荒くなります。それがひどくなると、驕り高ぶった心境になっていくものです。
しかし、ブームは長続きしません。やがて売上げは落ち込み、設 備投資をした際の借金の支払いに困ったり、ふくらんだ人件費の支 払いが滞ったりするでしょう。それまで周りでもてはやしていた人は、いつの間にかいなくなってしまいます。少し前まで驕り高ぶっていた気持ちはどこかに吹き飛んで、今度 は暗い顔で悲嘆にくれる日々を送ることになります。
驕り高ぶるのも、悲嘆にくれるのも、いずれも人として醜い姿を さらしているようなものです。事業の調子がよいときも、不景気で 調子が悪いときも、常に道徳心を忘れず、謙虚な気持ちでコツコツ と毎日の業務に臨むべきではないでしょうか。


出典:「三方よし」の人間学廣池千九郎の教え105選