地位や仕事に執着しない


長い間努力して獲得した地位や仕事に対して、多くの人たちは強い執着心を抱くものです。それによって名誉や利益がもたらされるのですから、なかなか手放すことができないのは、当然といえば当然といえるでしょう。

しかしながら、自分も他人も共に益する道を選ぶとき、私たちは地位や仕事にしがみついていてはいけません。自分がしてきた地位や仕事を譲るのに最適と思われる人物を推奨し、譲り渡していくという判断を、どこかの時点で下すべきだと考えます。自分の欲望を抑えて形式的にその立場を退くという意味ではなく、自分が任されてきた仕事等を、タイミングを見計らって適任者に継承するということです。

その後はさらに自分自身の生き方に磨きをかけ、日々の善行によって徳を積み、自己の品性の完成を目指して努力するのです。

このような考え方に基づいて、誰もが適任者に地位や仕事をタイ ミングよく譲っていけば、利益上の争いも、あるいは政治上の争いもなくなって、自分自身もその地位や仕事によって得た以上の幸福感を味わえるに違いありません。


出典:「三方よし」の人間学