少しの勇気を振り絞る


電車やバスに乗っていてお年寄りに席を譲るときには、ほんの少し勇気が必要です。周囲の視線に恥ずかしさを感じることもあるでしょう。あるいはそのお年寄りが頑固な人で、せっかく譲ったのに拒否される可能性もないとはいえないからです。

相手の「よいところ」を見つけて称賛したり、それを他の人に伝えたりするのにも勇気が必要です。それよりも、相手の悪いところを見つけたり、悪口を言ったりするほうが簡単で、その瞬間は ちょっとした(つまらない)優越感を味わえたりします。私たちは知らないうちにそうした悪しき心理状態に陥り、相手を責める発言をしてしまったりするのです。その結果、人間関係を悪くして、お互いに悩んだり苦しんだりしているわけです。

少しの勇気を振り絞って、率先して善い行いをしていきましょう。自分一人が親切をしていては損だ、などと思う必要はないのです。相手の悪いところではなく、長所を見て、能力を引き出し、それを伸ばしていけるように努力するのです。そうすれば、よい人間関係が育まれ、お互いに成長していけることでしょう。

万物を慈しみ育てる大自然の「心」を思い描いてみてください。そうした崇高な心に触発されることで気持ちがしなやかに強くなり、善い行いをするための勇気が湧いてくるはずです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選