意なく必なく固なく我なし


多くの人は、つい自分の考えに固執したり、自分の都合を優先して物事を判断したりしがちです。強硬に我を通そうとすると、人間関係が悪化し、争いが生じることもあります。これではよい社会をつくることはできません。

中国の孔子は、弟子たちから、「意なく必なく固なく我なし」と、その優れた人格を称えられたそうです。「意」は主観だけで判断すること、「必」は自分の考えを無理に押し通すこと、「固」は一つの判断に固執すること、「我」は自分の立場や都合だけを考えることを意味します。つまり孔子は、自分勝手な考えを持たず、自分の考えを押し付けず、頑固なところがなく、常に相手を思いやっていたのです。私たちもぜひ見習いたいものです。

そのためにはまず、あらゆる利己的な欲求をできるだけなくすように努力しましょう。食欲や性欲といった生理的欲求も正しくコントロールすべきです。人間の心身は自然の創造物ですから、自然の法則に従って謙虚に生きる努力が必要です。

そのうえで、常に他人の立場を思いやる慈しみの心を養っていくと、私たちの利己的な心はいつしかなくなることでしょう。その結果、周囲との衝突や争いもなくなって、自分にも社会にも幸福がもたらされることになるのです。


出典:「三方よし」の人間学