自我を捨て去る方法


道徳的に生きていくためには、利己心を捨てる必要があります。 自分の利害を考えて行動しているうちは、自我というものを捨て 去って(没却して)いませんから、得をするときには善いことをす るが、損をするときにはしない、という判断になります。それでは 諸聖人の崇高な道徳とは程遠いといわざるを得ません。 「自我を没却するには、まず不完全な自分の精神を捨て去らなけれ ばなりません。精神には、持って生まれた先天的な要素も、成長し ていく間に身についてしまった後天的な要素も含まれます。
自我を没却するといっても、雲をつかむような話に聞こえるかも しれませんが、これには方法があります。第一に諸聖人の教えを理解したうえで、心から感服し、感謝し、服従する気持ちになること です。素晴らしい道徳の導きに心身をゆだねてしまうのです。さらに、私たちは自然の法則のもとに生まれ育ち、生かされていること を自覚し、心を改めていきます。そして、万物を生み育てるという 自然の働きに学び、慈悲の心を発揮していくのです。
自然の法則を生み出したのは大いなる宇宙の力です。宇宙の力と は、宗教の世界では神ともいわれています。つまり自我を没却する ことで、神様の心と同化することにつながるのです。このようにし て、私たちの品性は完成に近づいていくわけです。


出典:「三方よし」の人間学廣池千九郎の教え105選