一芸を自慢せず、謙虚に学ぶ


精神的に未熟な人が、何か一つでも人より秀でたものを身につけると、それをことさらに自慢するようになるものです。例えば学校の成績を自慢したり、何かの芸を自慢げに披露したり、人より財産 が多いことを誇ったり、社会的地位が高いことを鼻にかけたりして しまうのです。
そういう人はだんだん他人を見下すようになり、態度が高慢に なっていく傾向があります。そのうちすっかり自己満足して、努力することを止めてしまい、謙虚に学ぼうとする気持ちをなくしていくのです。ましてや道徳的な生き方を学ぶことなど、思いもよらないことでしょう。
あるいは、他人との比較において、「この部分はあいつよりも勝っている」と優越感を抱いたり、少しでも自分よりも劣っているところを探し出して、自己満足をする人もいます。いずれにしても、道徳的な生き方とは程遠い精神状態といえます。
どんな長所や特技、能力があっても、それを他人に向かってことさらに自慢するべきではありません。どんなに長所が多い人でも、 何かしら短所も併せ持っているのが人間です。むしろ常に謙虚な気持ちを忘れず、自分の短所を補っていくことが大切でしょう。謙虚に努力することで、品性が磨かれていくものです。


出典:「三方よし」の人間学池千九郎の教え105選