モラル
道徳的な生き方を世界に広げる
「人類の教師」ともいわれる世界の諸聖人たちは、私たちに人と してのよりよい生き方を示してくれました。これを学んだなら、自 分自身の成長を目指すだけでなく、自分と関わり合いのある他の人 たちに、そうした生き方を伝えていく必要があります。これは単に 知識として教え諭すという意味ではなく、自分自身の生きる姿をもって相手に感化を与えるのが重要ということです。
何より大切なことは、相手の立場や人格を尊重することです。ど んなに自分がよいと思っていることでも、相手の気持ちに配慮せず、性急に説得しようとするのでは、押しつけと受け取られたり、 反発を招いたりすることにもなりかねません。相手のすべてを受け入れ、相手の喜びや悲しみに共感するような、低く柔らかく温かい思いやりの心を持って接するのです。そうしてこそ、相手との間に 精神的な絆が生まれ、相手の心に感化を与えることができるのでしょう。
そうして道徳的な生き方に目覚めた人が、さらに別の人を目覚め させることを繰り返していきます。するとその輪は、やがて世界に 広まっていくでしょう。いつの日か、世界中の人々が利己心を捨てて道徳的な生き方をするようになったら、平和な世の中が現出する はずです。
出典:「三方よし」の人間学–廣池千九郎の教え105選