天爵を修める


道徳的に生きることによって、人は幸せになることができます。しかし、個人的な幸福の獲得を目的にして、打算的に「道徳らしいこと」を行ってはいけません。見返りを求めず、純粋に「善い心づかいと行い」を貫くことで、人格が高まり、周囲から敬われるようになります。その結果として幸せがやってくるのです。

中国の孟子は、「天爵を修めて人爵これに従う」といいました。「天爵」とは、人格を高めることによって「天から与えられる位」のこと。「人爵」とは、古代中国において国王から諸侯や臣下に与えられた位のことです。孟子は、「人爵を得たい(出世して幸福になりたい)と思って、天爵を修めよう(道徳的に生きよう)とするのは、本末を見失っている」と諭しています。

天爵を修めるための五つの原理は、以下の通りです。

 

① 自己の欲求を浄化し、利己的な心を克服する。

② 万物を生み育てる神のような慈愛の心を身につける。

③ 人としての道徳的義務を進んで果たしていく。

④ 親祖先や国家・社会生活上の恩人に感謝し、その恩に報いる。

⑤ ①~④を実践しつつ、その心を他人にも伝えていく。

 

古来、偉人たちが示してきた最高レベルの道徳を実行し、天爵を修めることができるよう、日々精進していきたいものです。


出典:「三方よし」の人間学コラム