小さな善行を積み重ねる


「毎日毎日、朝から晩まで、いつも正義と自己犠牲の精神を忘れず、ちょっとした善行を積み重ねていくことが大切です。軽微な善行でかまいません。それを毎日続けることで、いつしか高い品性を備えた素晴らしい人間に成長していけるのです。
例えばどんな悪人でも、生きている間に一つも善行をしないということはないでしょう。凶悪な罪を犯すような人物でさえ、もしも目の前で幼児が川に落ち、おぼれて流されてしまい、それを助けら れる人間が自分しかいなかったら、何とかして助けようとするはずです。
重そうな荷物を持ったお年寄りが、階段の途中で疲れて動けなくなっていたら、ちょっと手を貸すくらいのことをするかもしれません。人間には道徳的本能というものがあり、普段いくら悪いこ とばかりしていても、何らかのきっかけで善人と同様の行動をとるケースがあるのです。
それでも悪人は、日常の大半の時間は悪いことを考え、正義に反する行動をとっています。時折よいことをしたからといって聖人に 近づけるわけではありません。
これに対して、道徳を学び、精神を高め、正義と自己犠牲を旨と して生きる人間が毎日善行を続けていけば、どれだけ大きく成長で きるのか、想像に難くないでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選