何よりの「胎教」とは


妊婦およびその周囲の人たちに限定した話になりますが、妊娠時の日々の心得について考えてみましょう。

「胎教」ということがよくいわれます。胎児に向かって呼びかけるとか、音楽を聞かせるとか、何かの教材の音声を聞かせるなどして、赤ちゃんがお腹の中にいるときからコミュニケーションをとろうとするものです。

昔の胎教は、現代とは違っていました。教育上よくないものを母親が見たり聞いたりしてはいけないと考えられ、妊婦の行動がいろいろと制限されていたのです。具体的には、芝居を見てはいけないとか、内容の悪い本を読んではいけないとか、あれもこれも胎教によくないという理由で禁止されたものでした。
そうした指導に表向きは従っていたとしても、心の中が不平不満や反抗心でいっぱいだったなら、そのストレスのほうが胎児に悪影響を与えることになるのではないでしょうか。

そうした細かい制限をするよりも、妊婦自身がただ人の幸せを願う心で善行を積み重ね、「どうかこの子が世のため人のために役立つ人間になりますように」と祈りながら心穏やかに過ごせるように、家族みんなで環境を整えていったなら、どんなに素晴らしいことでしょうか。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選