老年期に花開く「人間力」


人は老いていくと、記憶力などの衰えていく部分もあるでしょう。しかし、年を重ねてきたからこそ培われた「本質を見抜き、全体をとらえる力」は、すばらしい人間力といえるのではないでしょうか。

この力は、それまでの蓄積をもとにして、老年期に入って花開くものです。多くの芸術家や学者、技術者、職人が高齢になっても立派に仕事を成し遂げるのを見れば、よく理解できます。江戸時代に五十歳を過ぎて日本全土を測量した伊能忠敬や、七十歳を過ぎて大作を残した葛飾北斎、また、私たちが住む地域社会の中にも、仕事やライフワークで実力を発揮する高齢者は数多く見られるのではないでしょうか。

世の中のことを熟知した高齢者がみずからの人生の目標をつかみ、前向きに力を発揮できる社会を築いていきたいものです。

(平成二十一年全国敬老キャンペーン特別号)


出典:ニューモラル-心を育てる言葉366日