お父さん


今、お父さんを、私が面倒見なければ、きっと後で後悔することになる。そう思い、実家で一人暮らしの左半身不随になったお父さんを私のマンションで預かった。

お父さんはおむつを拒否した。二時間おきに自力でトイレへ行っていた。これはお父さんのプライドだと思った。入浴も、介護用品で帰ってきた椅子に座り、湯船に浸からず椅子に座ってシャワーだけで体を洗い、右手だけでシャンプーもしていた。

パジャマを着る時だけ、私が手伝った。食事は一日二食。あまりお腹が空かないので、右手だけで朝十時と午後四時の二回。ゆっくり食事していた。歯磨きもベッドでコップに水を汲んで洗面器にうがいした。歯ブラシと洗面器は私が洗った。

お父さんは毎回私に『ありがとうな』と言ってくれた。無口だが、私と娘の会話をニコニコしながら聞いてくれた。

そのうち寝たきりになってしまい、食事も一口ずつ食べられなくなって、入院することになった。

毎日お見舞いに行ったが、お父さんは本当に穏やかに安らかに眠るように亡くなった。

毎日お父さんの洗濯物をしていた頃が懐かしい。

大変なこともあったが実の父を介護できたことは良かった。

何度も何度もお父さんは『ありがとうな。』と繰り返してくれた。少しは親孝行できたかな。

いつも静かに微笑んでくれていたことが忘れられない思い出となった。お父さんを介護できてよかった。


(愛知県・N.Y/女性)