従業員の幸福実現を目指す


経営者の主要な仕事とは、ただただ従業員を幸福にしたいという 慈悲心のもと、従業員の品性を完成させるための努力を続けることであるといえます。
そのような経営者のもとで働く従業員は、例えば工場なら、作業の能率改善や製品の品質向上に、全身全霊を込めて取り組むようになるでしょう。
経営者が従業員を愛し、従業員が経営者を敬って努力する関係は、聖人が優れた教えを残し、弟子たちが教えに従って一所懸命に生きていく姿に似ています。この工場においては、経営者と従業員との間に、真の幸福が育まれているといえます。この伝統が続く限 り、誰もが素晴らしい人生をまっとうできるでしょう。
ところが、従業員の幸福よりも事業の拡大・売上げの増大を第一に考える経営者は、一時的に成功することはあっても、最終的には 哀れな末路を迎えることが多いものです。
というのも、事業最優先で、従業員や家族をないがしろにしてきたため、従業員や家族からは愛されていません。年若くて身体が強い間はそれでもやっていけたでしょう。しかし年老いて身体が弱くなり、昔ほど働けなくなったとき、その経営者は周囲の人から大切にされなくなり、わびしい老後を送ることになるのです。

 


出典:「三方よし」の人間学廣池千九郎の教え105選