道徳に基づく理念を立てる


事業を始めるとき、多くの人が、自分が取り組もうとしている事業の知識や情報を集めようと、ただそれだけに努力します。
例えば商売を始める人なら、何を売るのか、どこから仕入れるの か、どんな場所で売るのか、店舗をつくるのにいくらかかって、商 品を仕入れるのにいくらかかるのか、売価はいくらか、店員は必要 か、宣伝はどうする――といった具合です。
そうしたやり方だけでは、成功するときもあれば、失敗すること も多々あるでしょう。なぜ失敗するのかといえば、事業を始めるに
あたって、まず道徳的精神に基づく理念や方針というものが立てられていないからです。
ただ儲けようという気持ちだけで商売を始めると、安く仕入れて 高く売ろうとか、少々傷んでいても売ってしまおうといったことを つい考えてしまうものです。そうした店主の心は商品やサービスに表れて、お客にも伝わってしまうのです。
物を売るにしても、まず、商売を通してお客の役に立ちたい、お客に喜んでもらいたい、そのためにはどうすればよいか、という道徳的理念を築かなければなりません。そうした精神のもとで商売を行えば、真に喜ばれる商品やサービスが提供できるようになり、結 果として繁盛することになるのです。


出典:「三方よし」の人間学池千九郎の教え105選