他人と分かち合う心


苦労することの意味や値打ちについて考えてみましょう。

世の中には、苦労を避けて、努力することもなく、他人や社会に依存して生きようとする人がいます。そういう人は、周囲に迷惑を かけていても気にかけず、自分の目先の利益を優先しながら生きているのでしょう。これでは、いずれ他人からうとまれるようになり、幸せになることはできません。 一方、毎日一所懸命に働き、苦労を重ねて努力することで、物質的な豊かさや社会的地位、名誉などを獲得しながら、得たものをすべて自分や家族だけで享受する人もいます。努力することはもちろん立派ですが、他人や社会にいっさい還元しないのは、結局利己的な生き方にすぎないということになります。
苦労を避けるにしろ、苦労を重ねるにしろ、その人が自分のことしか考えずに生きている間は、真の幸福を得ることも、大きな安心を得ることもできないでしょう。

望ましい生き方とは、毎日の働きの中で最大限に努力し、ひたすら誠を尽くしつつ、これによって得られた成果を一人占めしたりせず、可能な限り他人や社会と分かち合うことではないでしょうか。他人の幸福のために苦労をいとわず努力する人は、心が豊かになり、人生の真の喜びを味わえるでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選