うろたえない、他人を煩わせない


困難に遭遇したとき、どのような態度でそれに対応するかには、 その人の人間性が表れます。 自分が所属する団体で、何らかのもめごとが起こったとしましょう。そのようなとき、自分の主張こそが正義であるといわんばかりに声高に叫ぶ人がいます。あるいは団体を擁護するためといいながら、本音の部分では自分の立場を守るための発言に終始する人もい ます。

こうした場合、その人の言動に対する世間の評価は著しく損なわれます。たとえ相手のほうが本当に不正を働いている場合でも、自己弁護ばかりしている人は、不正を働いた人と大差がないようにも見えます。もめごとを大きくして周囲に悪影響を与えるのでは、多くの人が嫌な思いをして、結局は自分自身も傷ついてしまうに違い ありません。

困難に遭遇し、たとえ自分の生活の基盤を崩されてしまったとしても、相手を恨んだり、自己弁護をしたりしないのが、真に誠実な生き方・態度といえるでしょう。うろたえたり、周囲の人を煩わせたりせず、すべてを成長の糧として吸収するように努め、ただただ自らの天職に全力を尽くしていくのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選