お坊さんの反省


あるお坊さんのお話です。修学旅行で寺を訪れた中学生に法話を行った後、お坊さんがあたりの片付けをしていると、一人の男子生徒が五円玉をこちらに向けて投げつけ、笑いながら合掌しました。なんて失礼な子だ、と思ったお坊さんは「せっかくだけど、このお金はお賽銭箱に納めてください」と伝え、五円玉を拾って渡しました。
その夜、風呂の中で昼間の出来事を振り返ったお坊さんの胸に、ある思いが浮かんできました。あの子は、仏との「ご縁」に感謝して「五円」を投げたのではないか。感謝の気持ちを表す方法が分からず、突飛な行動になったのではないか。私にそのことがすぐ理解できていれば「ありがとう。私からご本尊にお供えしておきます」と言えたのではないか。不快感を覚えた自分の心は、なんと固く狭い心だろうか……と。 お坊さんは受けとめ方一つで、この体験を、心を省みる機会にしたのです。

(四三〇号)


出典:ニューモラル-心を育てる言葉366日