無我の心になる。


何を行うにも、よい結果を生むためには、「無我の心」になることが大切です。無我の心とは、自分にとらわれない心の状態です。

自分にとらわれず、何物にも執着せず、利己心から脱却した状態になれば、物事を正しく見られるようになります。正しく考えられるようになります。正しく行動できるようになります。正しく見て、「正しく考えて、正しく行動すれば、おのずからよい結果が生まれるというわけです。

例えば経営者が自分にとらわれていると、どうなるでしょうか。自分一人の狭い価値基準で物事を考えるため、せっかく優れた従業員がいても、能力を見抜くことができないかもしれません。従業員の能力がわからなければ、適材を適所に配置することもできません。多くの従業員が持てる能力を存分に発揮できなければ、事業としてよい結果を得ることは難しくなってしまいます。

人を教え導こうとする際に、「あの人は好きだから教えるけれども、あの人は好きではないからやめておこう」といった具合に、個人的な好き嫌いで判断するのも誤りです。自己の好悪にとらわれた 人間の言葉は相手の心には響かないでしょう。何事にも無我の心で、慈悲心を持って取り組むことが肝要です。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選