慣習や制度は道徳に基づいてつくられる


社会の慣習や国家の制度は、道徳の発達にともなって進化してきたといえます。相手を敬う心を表すためにお辞儀をしたり、物を贈ったりすること、あるいは先祖を敬い、弔いの気持ちを表すために法要を行い、お墓参りをすることなどもその一つといえます。

また、人の物を奪ったり壊したり、人を傷つけたり殺めたりしてはいけないという考えに基づいて、刑罰を定めた法律がつくられ、警察や裁判所が設けられています。正しい経済活動を行い、不合理な経営をしないように、種々の法律が設けられており、違反した者は罰せられます。あるいは商人同士が守るべき商道徳というものもあります。

いずれも道徳を大切にする立場で、人間が正しく行動していくたにつくられた慣習や決まりであるといえるでしょう。

見方を変えると、人の道に怪る慣習や制度、法律などは、自然に、あるいは人為的に淘汰されていくものと考えられます。そして道徳的な慣習や制度が社会に定着していくわけです。

こうした慣習や制度を無視し、それに反するような行動をとったとき、その人は罰せられ、社会からはじき出されてしまうでしょう。もしも国家が道徳に反する制度をつくって運用したならば、その国家の将来も危ういものとなるでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選