人を変える「言葉の力」


盤球永琢禅師(ばんけいようたくぜんじ/1622〜1693)が弟子たちと一緒に修行していたとき、親から勘当された悪童が寺に入ってきました。寺に来てからも、その悪行は収まりません。

弟子たちは、悪童を破門するよう師に願い出ました。しかし悪童は破門になる気配もなく、ますます悪事を働きます。やがて弟子たちは、ついに「彼を破門しないのなら、私たちが寺を出ていきます」と、師に詰め寄りました。

すると師は「そんなに言うのであれば、お前たちが寺を出て行きなさい。お前たちは寺を出ても立派にやっていけるが、彼は破門されたらもう行くところがない」と。

弟子たちは盤桂禅師の深い思いやりに気づき、感激に震えました。この様子を陰から見ていた悪童は、その後、人が変わったように修行に励んだということです。 言葉に込められた深い思いには、人の心をも変える力があるのです。

(三〇六号)


出典:ニューモラル-心を育てる言葉366日