天からの報酬


いつもいた他人に対して親切に振る舞う際は、決して見返りを求めるものではありません。自らの過去の過失を償う気持ちで、完全に無欲の姿勢を貫き、心から相手の幸せを願ってこれを行いたいものです。

無欲であればあるほど、施した行為に対する報酬が、不思議なくらい与えられるものです。しかも施した相手からではなく、別の人から、思いがけない形で返ってくることも珍しくありません。これは世の中の一つの真理といってもよいのではないでしょうか。まさに天からの報酬です。

例えばAさんが、Bさんに対してさりげなく親切な行いをしたとします。そのときのBさんはたまたまAさんがしてくれたことに気づかず、お礼を言うこともなかったとしましょう。AさんはBさんからの見返りは得られなかったわけですが、別の知り合いであるCさんは、Aさんから直接的に「親切な行為」を受けたことがなかったとしても、Aさんの日頃の雰囲気から何かを感じ取り、いざというときAさんのためになる行動をとってくれたりするのです。

あるいは親孝行をして、親から直接的に感謝の言葉を受けることがなかったとしても、ごく自然に自分の子供が孝養を尽くしてくれたりするものです。世の中とは、そうしたものなのでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選