なぜ利己心が問題なのか


私たちの心の中にある「利己心」の内容と特徴について、整理しておきましょう。文字通りの意味は、自分の利益だけを図ろうとする気持ちのことです。

この利己心にはいろいろな問題があります。

例えば私たちには、自分の家族や血縁関係にある人を本能的に愛する傾向があります。これはごく自然な感情のように思えます。ところが遺産相続の問題などで利害が衝突すると、たとえ親兄弟で あってもたちまち敵対関係に陥ってしまいます。要は、「血がつながっているから自分の味方になってくれる、とか、自分に得をさせてくれる」と期待する利己心があるから、損をしそうになった途 端に憎しみが湧いてくるのではないでしょうか。

表向きは好意的に振る舞っていても、心の奥で見返りを期待していると、見返りのないことがストレスになります。ストレスがたまれば、精神も肉体も害してしまうものです。

愛国心を持つのは国民として大切なことです。しかし、自国の利益ばかりを優先したり、自国の優れているところを誇って他を蔑んだり、あるいは他に嫉妬したり恨んだりするのは、利己心の表れにほかなりません。これがエスカレートすれば最終的には戦争が起こり、多くの命が失われ、財産も焼き払われてしまうのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選