真に価値があることを優先する


何が大事なのか、あるいはさほど大事ではないのかをきちんと見分けて、大事なことを優先し、そうでないことはことさら追い求めないようにしなければなりません。大事ではないことに時間やエネルギーや精神力を費やすのは、限りある人生において大きな無駄になってしまうこともあるからです。

人生で真に価値があるのは、日々の生活の中で道徳的な生き方を志し、人格を磨き、品性を向上させていくことです。もちろん働いて金銭を稼ぐことも必要ですし、趣味を楽しむ時間も大切です。しかし、他人の迷惑も顧みないでお金も稼いだり、家族を守るのをおろそかにして趣味に没頭したりする人は、優先順位を間違えているといわなければなりません。

生き方のことなどわざわざ考えなくても、一時的にお金を儲け、瞬間的に快楽を味わうことはできるかもしれません。しかし、人を幸せにできない人生に、どれほどの価値があるのでしょうか。

世の中の「幸せの量」を増やしていくために、道徳的な生き方を身につけ、よりより心づかいと行いを実践することを最優先しましょう。そうして一人ひとりが徳を積み、豊かな慈悲の心を養っていくのです。多くの人が実践すれば、その分だけ世の中はよくなります。それ以外は、二の次に考えればいいのではないでしょうか。


出典:「三方よし」の人間学 廣池千九郎の教え105選