生活の中で道徳を実践する


道徳は知識や理論ではなく、日々実践していく人間の生き方そのものであるといえます。ですから、ただ道徳を学ぶだけでなく、日常生活の中で行動に表していかなければなりません。

その入口は、偉人たちが遺した言葉を記した書物や、行動の記録から、生き方を知識として学ぶことかもしれません。あるいは学校教育のプログラムなどにも、そうしたことに触れる機会は含まれているでしょう。偉人の名言や物語を聞くと、私たちは大いに感動しますし、心にも残ります。

ただし、それらはすべて、道徳的に生きることの大切さに気づくためのきっかけだと考えるべきでしょう。その意味では、本書もまたこれを知るきっかけの一つにすぎません。

大切なのは、日頃から道徳的に物事を考え、道徳的に行動し、必要に応じて道徳の大切さを人に伝えていくことです。そうして道徳的に生きる難しさと素晴らしさを「体感」し、心身に刻みつけていくのです。

私たちは、偉人たちの存在を遠く感じて、真似など到底できないと思ってしまいがちです。しかし、自分にできることを、少しずつでも一所懸命にやっていきましょう。いつの日か、道徳的に生きることの尊さを深く理解できるようになるはずです。


出典:「三方よし」の人間学 廣池千九郎の教え105選