創業期も守成期も同様に努力する


創業してから事業を軌道に乗せるまでの間、経営者は相当な努力 をしなければなりません。商品やサービスを充実させ、設備を整 え、技術を磨き、資金繰りに腐心し、従業員の教育に悩み、その他 さまざまな苦労を乗り越えながら経営に取り組みます。また、事業 の成功につながる人間関係をつくるため、各方面の関係者に対して気をつかい、愛情を注いでいくのです。
このように創業期においては、ほとんどの経営者がたいへんな思 いをしながら頑張るわけです。ところがその後、業績が順調に伸びて財力もついてくると、だんだん経営者の気持ちも変化していきます。いわゆる守成期においては、安心感が湧いてきて、創業期のような努力をしなくなってしまうのです。
やがて油断が生じ、高慢になり、直接利益にならない人を軽んじたり、無視したりするようになることもあります。つまり、謙虚さ を失った状態に陥るということです。
成功して財をなした後も、努力して他人に愛情を注ごうとする経 営者もなかにはいます。しかし利己主義が根底にあると、上から見下ろすような嫌味な態度になっている可能性があります。
守成期においても、経営者は努力を止めてはいけません。道徳的 で謙虚な生き方を貫き、心から人を愛し続けるのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選