お客をあざむかない


商売をする人の心得について考えてみましょう。 まず、物を売るにあたって、商売をする人はお客をあざむいてはいけません。道徳を旨として商売をするなら、必ずきちんとした商品をとりそろえます。もちろん価格も良心的に設定します。さらに商品の受け渡し方や接客態度、そのほかお客への種々の心づかいなど、すべてにおいて正義と慈悲の心を持って行います。
あまりにも理不尽なことを要求してくるお客とは、やむを得ず取引を中止しなければいけない場合もあるかもしれません。それが大口の取引先だと、一時的に経営状態が悪化する可能性もあります。 そんなときには新規顧客の開拓に努力します。あくまでも誠実な商売を貫けば、必ず業績は回復するでしょう。
反対に、お客をあざむくような商売をしていると、どうなるでしょうか。例えば相手は素人だと思って値段をふっかけたり、古くて傷んだ商品をこっそり混ぜておいたりすると、目の肥えたお客は、値段と品質が合っていないことに気づくものです。
当然、商品に文句をつけられたり、値切られたりするでしょう。 値切られたうえに、いくつかの商品の中から少しでもよいものを選ぼうとされたりします。このような敵対関係ではなく、お客とはお互いに尊重し合える商売をしなければいけません。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選