悪習慣の改善はゆるやかに進める


人格や習慣の改善は急激に行わず、ゆるやかに、かつ自発的に推 し進めるべきでしょう。
例えば従来の諸宗教などにおいては、過去の慣例、慣習、礼儀等の形式を急激に破壊し、そこで提唱されている形式をすぐさま実行するように仕向ける場合があります。このようなやり方で成功することもあるかもしれません。しかし、心身に長年しみついた習慣を 突然改めるのは非常に困難であり、かえって大きな精神的なストレスを抱える危険性もあります。
そこで、その人が何らかの悪い習慣を持っていても、突然止めさ せたりせず、ひとまず現状を持続することを許します。その状態で、まずは精神面の改善だけに取り組んでもらうのです。短気な人には、物事に怒りの感情でぶつかるのではなく、温かい慈悲の心を養うことに専念するように指導します。そうして精神の部分が根本的に改まってくると、次第に悪い習慣が少なくなっていくものです。その変化は、意志の力で無理やり行 うものではありません。本人の内面から自発的に変わっていくのです。そのため精神的なストレスが発生しにくく、苦痛をともないません。よほど緊急に止める必要性のある悪習慣以外は、自然な変化 に任せておくほうが得策といえます。


出典:「三方よし」の人間学池千九郎の教え105選