私たち人間が種々の欲望から離れて、しかも我慢をしないで生きていくことは可能なのでしょうか。
現代社会は、欲望が解放された時代であるといえます。人々は物欲を満足させることを追求し、ただ享楽を求めて生きているようにすら見えます。これは決して健全な生き方とはいえません。美味しいものをたくさん食べたいとか、美味しいお酒をたくさん飲みたいといった欲望を解放し、暴飲暴食を続けると、どうなるでしょう。
当然健康を害し、寿命を縮めることすらあります。
これに対して我慢強い人、忍耐強い人は、他人から尊敬され、高く評価されることもあるでしょう。しかし、これもまた「精神的な欲望」といえるのではないでしょうか。我慢しすぎることによって精神的なストレスが蓄積し、心身症や神経症を引き起こしてしまう危険性もあります。
いずれにしても、真の幸福を得るために、私たちは欲望を克服しなければなりません。欲望から離れ、しかも我慢をしない生き方、それこそが「自然の法則に適った生き方」であるといえます。日々の生活の中で、他人を愛する心、感謝する心、反省する心を養うように努め、そうした生き方の中で満足感を得ていきたいものです。

出典：「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え１０５選