失敗や不忠実を糾弾しない


人は自分が所属する組織・団体に愛着を持ち、その繁栄を願っているものです。なかには、勤めている会社が嫌いな人もいるかもしれませんが、そうした人は、いずれ職場を変えるでしょう。多くの人は自分のいる組織・団体を愛しており、組織・団体のために我を忘れて働く人も、たくさんいます。

しかし、我を忘れて働いているからといって、その人に利己心がないとは限りません。例えば一所懸命に働いていても、思いやりの心や人間尊重の精神に欠けていて、自分の利害に直結することには厳しい視線を向ける人もいます。そうした人は同僚が失敗を犯したり、あるいは所属する組織に対して忠実でなかったりすると、腹を立て、批判するのです。そこには「他人の失敗や忠実でない働きによって、自分が被害を受けたくない」という気持ちもあるのではないでしょうか。

人を大切に思い、同時に組織を愛する気持ちを本当に持っているのなら、失敗や不忠実を糾弾したりせず、憎んだりせず、その人にまず愛情を注ぎましょう。そのうえで相手の幸せを心から願い、日々の業務をしっかりと行うよう指導していくのです。

失敗や不忠実を責めるよりも、その人を育てたほうが、組織・団体の利益にも皆の幸福にもつながるのです。

事の大小は関係ありません。修正していくべきことは、自らの責任において改善していくのです。このように心がければ、人生はより素晴らしいものになっていきます。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選