心の「罪」を犯さない


私たち人間には、利己心というものがあります。 自分だけは損をしたくない、自分だけは得をしたい、自分の考えに合わないものは受け入れたくない、自分の都合のいいようにしたい、とにかく自分の家族だけは守りたい、というふうに、無意識のうちに思ってしまうものです。

利己心が働くと、私たちは自分の得にならないことを避けたり、 人の心を傷つけたり、心の中で人を責めたり、嫌なものを遠ざけたりします。また、たとえ自分の努力で得たものであっても、これを独占し、他人にいっさい分け与えないという態度は利己的といえるでしょう。

これらはすべて、「道徳的過失」というべき心の状態です。私たちは自分一人の力だけで生きていると思っている限り、利己心は消えず、自分を脅かすと思われるものに対して攻撃的な態度に出てしまうのではないでしょうか。

私たちは、知らず知らずのうちに心の中で犯している「罪」をどこかの時点で反省し、これを償う気持ちで他人に施していきたいものです。自分が自然の大いなる力によって生かされていることを思い、労力を惜しまず、金銭や物質の犠牲もいとわず、見返りも求めず、世のため人のために生きていくのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選