人間の自由と秩序


人間は本来、自由に生きる権利を有しています。憲法においても、言論、思想、信教、職業選択などの自由が保障されており、誰からも拘束されることはありません。「ところが世の中には、自分は自由なのだから何をいっても、何をしてもかまわない」と考える人もいます。

例えば、罵詈雑言や誹謗 中傷を匿名で発表して、特定の人物を 執拗に攻撃する人が少なからずいます。その人たちはおそらく自由の意味を履き違えているのでしょう。いくら言論の自由が保障されているといっても、いたずらに人々を混乱させたり、人の心を傷つ けたり、社会の秩序を乱したりすることが道義的に許されるわけは ありません。これは権利の濫用であり、自分さえよければいいという利己的な行動にほかならないのです。

秩序ある健全な状態をつくっていくため、国には法律が、社会には公衆道徳が、会社には社是や就業規則が、学校には校則が存在しています。秩序とは自由を制限するものではありません。互いに秩序を守ることによって、むしろ各人の自由は尊重されることになります。逆に秩序を乱せば、社会に混乱を与えた人間として罰が与え られ、自由が奪われることもあります。慈悲心に基づいて秩序の確 立に努めれば、本当の心の自由を獲得できるのです。


出典:「三方よし」の人間学