五十一対四十九


臨床心理学者の河合隼雄(かわいはやお)氏(一九二八〜二〇〇七)は、「心の中のことは、だいたい五 十一対四十九くらいのところで勝負がついていることが多い」(『こころの処方箋』新潮 文庫)と述べています。悪いことをする人でも、最初から悪い心が百で、善い心がゼロだったわけではなく、「悪い心が五十一で、善い心が四十九」というギリギリのところで迷っているのかもしれません。

「人心これ危うく、道心これ微かなり」(『尚書』)というように、人間の心とはたいへん危ういものです。誰もが生まれながらにして「良心」を持っていても、日々の生活 の中で、そこに欲心などが覆いかぶさってくるのです。しかし、どんなに小さな善行でも毎日それを続けていくことで、心の隙間に「悪い心」が入り込むのを防ぎ、もともとあった「美しい心」を引き出すことができるのではないでしょうか。


出典:ニューモラル心を育てる言葉366日