介護食と私の出会い


私は今まで介護食とは縁遠い仕事をしていました。調理師という職種の中で、病院や介護福祉施設を選択するということを避けていました。正直に言うと、やりがいがなさそうと思っていたからです。
転職の際、前職のような飲食店の求人が思うように見つからず、介護福祉施設の調理を自分の経験の一つとして選択してみることにしました。同じ調理の仕事でも業務内容を全く違いました。細かく決められた食事形態で全員が同じ食事でも、人によって変わるということ。慣れない環境で覚えることは大変でした。また人手不足と業務内容の多さが重なりやりがいを感じる余裕はないままでした。
介護食や大量調理にも慣れてきた頃。私の曾祖母が高齢のため、普通の食事が取れなくなってしまいました。
曾祖母は大正生まれで女学校に入ったお嬢様だったからなのか、プライドが高く、自分の食べたい物、食べたくない物をはっきり言う人でした。九十九歳で体の衰えはあったものの、口と頭は達者な人でした。
長い間、実家に帰っていませんでしたが介護食に関わる仕事をしていることをきっかけに、曾祖母の夕食を作りに行くことになりました。ある日の夕食のこと、曾祖母はご飯を飲み込むことが難しく、おかゆにしようとしたら。おかゆは嫌いだとのことでした。
私は施設でパンの日に作っていたパンがゆを出してみました。頑な曾祖母が「美味しい」と言って完食してくれたのを見ると、私は作り甲斐があったと思いました。人のために作るという、やりがいや喜びを見つけたように感じました。仕事では忙しさでそんなものはないと思っていましたが、いざ自分の家族がその対象となったとき、見え方が全く違いました。
食事は身体を作るもの、私はその時の思いから、料理に対する想いが少し変化したようにな気がします。綺麗で豪華な料理ばかりが料理ではない。毎日の食事でも誰かに喜んでもらえる。そんな風に感じました。曾祖母を通して、食の大切さとやりがいは何かを見いだせたような気がします。その学びを自分の中で活かせるように仕事と向き合っていきたいと思いました。


(千葉県・R.I/女性)