親孝行ができる幸せ


私の母は、私が結婚する前から、半身不随だった。家では、左足に装具を付け、杖での移動。外では、車椅子を使っていた。
左手も動かないので、家事も出来ない。私が結婚してからは、家事と介護は父がすることになった。
今まで一切家事をしたことのない父だったので、結婚することに罪悪感を感じていた私だったが、父は家事と介護をできるようになり、近所の人達ともよく話すようになった。
私は、父母の栄養面を心配して、一週間に一日、実家に帰り、晩ご飯を作っていた。
それは娘が生まれてからも続けていた。
父が入院した時は、母を介護する人がいないので、母はショートステイしていた。しかし、介護度の関係で、一ヶ月に四日ほど施設にいられないため、その時は家に帰ってきた。
その時は、私も娘を連れて実家に戻り、泊まり込みで母の世話をしていた。
ある時、娘が、困っている車椅子の人に手を貸したり、杖をついている人を支えたりしている姿に気がついた。
「体の不自由な人に、さっと手を貸してあげることができるなんて、すごいね。優しいね。」と娘に言うと、娘は変な顔をして「そんなの、当たり前。」と返してきた。
娘にとって、生まれた時から半身不随の祖母がいて、車椅子で移動する姿が、日常で当たり前の光景になっていたのだなと気が付いた。
母の介護をすることによって、成長した父。
母の介護をする私を見て、障害者の人に手を貸すことが当たり前という娘。
そして、別れる時に必ず「ありがとう。」という母。
介護という親孝行が出来る幸せを感じている私である。


(福岡県・M.K/女性)