子猫のぴーちゃん


私、現在八十七歳。二十年ほど前に母は九十歳で亡くなった。

兄弟六人、私は長男で、母は私たち家族と同居していたが、最後の六、七年は病気がちで入退院を繰り替えしていた。もちろん妻や子供など家族や兄弟は懸命に介護に尽くしてくれたが、それにもまして私たち、いやそれ以上に母の介護に参加し、力を与えてくれたのは、子猫の‘‘ピー子ちゃん‘‘である。

五、六年前、母が朝、庭の畑を散歩していた時、門の中で、ピーピー泣いていた子猫を見つけたのである。どうせ誰かが夜の内に投げ込んだのだろう。母は可哀想に思って、ピーピー鳴いていたので‘‘ピー子ちゃん”と名付け、わが家の一員となった。一番可愛がったのは母で、一緒に寝たり、入院した時、ピー子ちゃんをされて行かなかった時などは、とても寂しそうだった。

母の葬儀を済ませ、山の焼き場へも勿論ピー子ちゃんは連れて行った。ところが、私たちが一寸目を離した好きに、手を離れてどこかへ行ってしまったのである。山は深い。いくら読んでもかえってこなかった。私たちは、

〈ピー子ちゃんは、いつものようにお母ちゃんの懐に抱かれ、頭をなでてもらいながら、仏様の国に行ってるのだろうね〉

と、話し合ったものである。男

ピー子ちゃんは、私たち家族にとって可愛い、愛すべき‘‘絆の基‘‘であった。


(香川県・I./男性)