君のために生きたい


炊事洗濯ぜんぶダメ。印鑑の場所さえわからない。そんな俺を50年間支えてくれた妻。口癖は「あなたより先に逝けないわ」だった。だけど神様はそんな妻に試練を与えた。五年前に発症した認知症。料理もできなければ粗相もする。徘徊をくり返し、今ではご近所さんに頭を下げる日々。正直手に負えないこともあるし、介護がしんどくなることもある。だけど介護をするうちに気づいた。
「君より先に逝けない」と。
散々君に迷惑をかけた僕だからこそ今は君のために生きたい。一日でも長く。君より長く。それがダメな亭主の使命だと思うから。


(東京都・J.K/男性)