自己流の介護


義母の介護を1年間勤めました。母は骨粗しょう症とやらで全身硬直、もちろん口が聞けません。訪問ヘルパーがすぐに入れ替わり立ち代わり訪れて、親切に介護してくれはりましたが、どのヘルパーも決められたマニュアル通りの仕事をこなしてはりました。

私が介護をするようになって、ヘルパーさんはお断りしました。私はマニュアルも何もありません、自分で考えて自分流の介護をしました。

ある朝、味噌汁を作って部屋へ入りました。途端、動かなかった能面のようなおばあちゃんの表情が緩んだのです。動いたのです。今まで長年ヘルパーさんは味噌汁を差し上げる事はなかったのです。味噌汁が欲しかったんだ・・・でも口が聞けず・・・もっと早く気がつけば・・・おふくろさんでもお袋にとって味噌汁はおふくろの味なんだと知りました。マニュアル通りより我流のほうがよかったんだと思いました。

義母の長男も70過ぎの老体ながらできるだけの気遣いはしてはりました。ある時、「座薬です」と言われた座薬を入れてくれはりました。全然効き目がありません。偶然でしたが、長男がお母さんの座薬を入れた場所、前であった事を見ました。女は下半身に出口、入口、2つの穴が並んでいますので、入りやすい前の入り口へ入れはったのですが、薬が効くはずはありません。おばあちゃんにとってはありがた迷惑な息子のご親切だったようですが、親と子のことです。「座薬です」と渡されて座って飲んだおばあちゃんもいはったとか。座薬って難儀なお薬だと思いました。

耳元で童謡を歌ってあげたら、なんと唇がピクピク動いているのです。一緒に声が出なくても、歌ってはりました。ばあちゃんは歌が好きだったんだ、と気づきました。テレビの歌番組見せてあげました。じーっと聞いてはりました。1年後旅立たれましたが、自己流の介護、少しは役に立ったかしら・・・

 


(兵庫県・Y.H/女性)