「三方よし」で幸せになる


誰でも自分や家族、親戚、友人、同僚など、比較的近しい間柄にある人を優先して扱うことが多いでしょう。血縁関係にあるとか、 気が合うとか、毎日のように顔を合わせるとか、同じ目的を持って 努力している人たちに対して、思い入れ、愛情、好意を抱くのは当然です。おそらくほとんど無意識のうちに、家族や仲間をそれ以外 の人たちよりも大切にしようとします。
しかし、仲間内を優先することで、それ以外の人たちと利害がぶ つかることがあります。例えば混雑している公共の乗り物の中で、家族や仲間が座る席を、多少無理をして(割り込んででも)確保したとします。家族や仲間を大切にするという意味では、いくらか道徳的かもしれません。しかし、割り込まれて座れなかった人たちに対しては不道徳な行為になっています。
あるいは人種とか国家という単位で考えると、問題はさらに深刻です。自らが所属する人種を優先し、それ以外の人種を冷遇するよ うな政治を行えば、最悪の場合、紛争や戦争にまで発展してしまう でしょう。同じ人種の中では道徳的に思えても、冷遇された人間に とってははなはだ不道徳であるといえます。
真の道徳においては、自分も、相手も、さらに第三者をも幸せに なるような道を探っていくことで、皆が幸せになるのです。


出典:「三方よし」の人間学廣池千九郎の教え105選