慈しみと寛容さと自らを省みる心


仏教用語の「慈悲」には、「仏が人々をあわれんで、苦しみを取り除き、楽を与える(抜苦与楽)」という意味があります。また、 単に「情け」とか「あわれみ」といった意味でも用いられます。 孔子も「仁」という言葉を使って、「人を慈しむ心」が大切であることを強調しています。イエス・キリストが唱えた「愛」も、仏教の 慈悲や孔子の仁とほぼ同一のものと考えてよいでしょう。

本書ではそれらを代表して「慈悲」という言葉を使っています。

人を慈しむと同時に、人に対して「寛大」であることも非常に大切です。寛大とは、いっさいのものを受け入れて育む、広くて大きな心を表しています。自分のことを大事にしてくれる人に対してだけでなく、過去に敵対したり、反目し合ってしまった相手に対しても、寛大でなければなりません。

また、何があっても相手を責めたりせず、自分に至らないところ があったのではないかと省みる姿勢も忘れてはいけません。いくら自分が被害者であるかのように見えていても、そこに至るまでには必ず反省すべき点があるはずだからです。

他に対して慈悲の心を抱き、寛大でありつつ、自らを省みながら人と接していくうちに、円満な人間関係と幸福が得られることでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選