恩恵に感謝し報いる


諸聖人は、私たちに素晴らしい教えを遺してくれました。彼らは私たちに何かを求めるということはなく、ただ一方的に私たちを導いてくれています。

私たちを生み育ててくれた両親も(または育ての親にあたる人も)、私たちに無償の愛情を注いでくれました。いくらたいへんで、どれだけお金がかかっても、それに対する見返りを求めることはなく、私たちの健康と幸福を祈り、見守ってくれています。

国家については、そのときそのときの政治・経済等の状況もあって常に理想的な状態であるとはいえない面もあります。しかし日本の国は、おおむね平和な状態が保たれており、世界に誇る豊かな日本が形成されているのは、私たちの先祖の努力の賜物にほかなりません。

たとえ見返りを求められなくても、感謝を要求されなくても、恩恵を受けた私たちは、精神的にも物質的にも、できる限り恩に報いていきたいものです。また、この考え方を、後世に伝えていく努力をしなければなりません。私たちが行うべきこうした行動は、誰からも指示されませんから、いわば「言外の真理」というべきものです。恩恵を受けて喜んでいるだけでなく、そうした真理を自覚していくことも大切です。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選