食物連鎖と社会のあり方


植物を含む地球上の生物は、「食べる・食べられる」という関係で成り立っていて、それが鎖の輪のようにつながっています。いわゆる「食物連鎖」です。

植物を食べる草食動物がいれば、それを食べる肉食動物がいます。肉食動物の食べ残しを食べる、別の動物もいます。動物の死骸はやがてバクテリアによって分解され、植物の栄養になります。そうして育った植物が、また草食動物に食べられるのです。

これは、世の中には絶対的な優位性を持つ生物はいない、ということを表しています。肉食動物が異常繁殖すると、餌となる草食動物が減り、食物連鎖の輪が崩れ、生態系全体が滅びることになりかねません。すべては「支え合い」で成り立っているのです。

人間の社会も同じです。学問を修めることだけが大切だと考えて、世界中の人々が全員学者を目指したら、どうなるでしょうか。衣食住に関わる生産活動に携わる人がいなくなっただけでも、社会は滅亡へと向かうことでしょう。

現代社会において、いわゆる文明人の大多数は、財力と権力のみが万能であり、これがなければ幸福になれないと誤解しています。

それぞれの持ち場で社会を支える人の存在に気づかなければ、世界の平和や幸福が損なわれるのではないでしょうか。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選