敵に塩を送る


戦国時代のお話です。あるとき、武田信玄の領する甲斐の国(今の山梨県)は、敵に「よって塩の運搬路を絶たれてしまいました。塩は生命を維持するために欠かせないものです。このとき、信玄の宿敵といわれた越後(今の新潟県)の上杉謙信は、甲斐の国に塩を届けさせたのです。

私たちの先人は、この「敵に塩を送る」という逸話によって、敵国であっても領民まで巻き添えにして苦しめてはいけないこと、また、敵対する相手にも思いやりをかけ、正々堂々と向き合うことの大切さを伝えてきました。

古くから言い伝えられてきた逸話や教訓には、いつの時代も変わらない大切な道徳性が含まれています。子供同士の喧嘩の際、「弱い者をいじめてはいけない」とか「大勢で一人を相手にするのは卑怯である」などと教えたのも、その例といえるでしょう。
こうした先人たちの教えの意義を、今、あらためて見つめてみませんか。

(四〇二号)


出典:ニューモラル心を育てる言葉366日