学力が高くても財産がつくれない理由


人間にとって最も難しいのは、学問や知識を道徳的に運用しながら、同時に人格・品性を磨いていくことだといえます。

ところが多くの人は、お金を稼いで財産をつくることが何よりも難しいと考えて、四苦八苦しながら日々の生活を送っています。実は、お金を稼ぐことそのものは、さほど難しいことではありません。

学校の成績はよくなかったとしても、熱心かつ勤勉に働き、倹約し、忍耐し、正直を旨とし、コツコツと貯蓄に努めた人は、比較的容易にある程度の財産を積み上げています。

それなのに、学力も知識もある人であっても、財産をつくれない 場合があるのはなぜでしょうか。それは、知識だけがあり余っていて、道徳心がともなっていないからです。私欲が強くて、傲慢で、自尊心や虚栄心も強く、納得できないものに対して激しく怒り、恩に背いたり、周囲の人の愛情に背いたりする人は、そうした未熟な精神をもって、かえって富や名誉を遠ざけてしまうのです。

難しいことではありますが、学問的知識を得れば得るほど謙虚になり、広く柔らかな心をもって働きつつ、人格を磨いていきましょう。そうするうちに、自然と周囲の信頼が集まり、やがて金銭以上に大切なものを得ることができるのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選