素早く、確実に、しとやか、かつ安全に


どのような物事でも、それを高いレベルで成就しようとする際、素早く、確実に、しとやかで、しかも安全に行うのが理想です。

食事をとるためにお店にはいったときのことを考えてみましょう。料理が早く出てくるのは良いことですが、急いだがために確実性や安全性が損なわれるのでは、安心して食べることはできません。また、どんなにご馳走でも、それを運んでくる従業員が無作法で、お膳を乱雑に置いて埃が立つのも構わずにバタバタと出て行くのでは、おいしく感じられないでしょう。

ただし、これらの要件をすべて満たして行動するのは、とても難しいことだといえます。人には得手不得手があり、何もかも完全にこなせる人はそうそういないからです。

何でも素早く行おうとする人は、いくらか行動が雑になって、しとやかさが損なわれる場合が多いものです。何でも確実かつ丁寧に行う人は、人より時間がかかることも多いはずです。かといって安全性が二の次でも、信用は得られないでしょう。

難しいことではありますが、人の幸せを願い、世の中のために尽くそうと考えるなら、全部の要件を高めるように努力する必要があります。早ければ雑でもいい、しとやかであれば遅くてもいいなどと考えず、自己を極限まで高めていきたいものです。


出典:「三方よし」の人間学 廣池千九郎の教え105選