継続を力にした先人


宮大工・西岡常一氏(一九〇八~一九九五)の祖父は、常一氏を三歳のころから宮大工として働く自分の仕事場に連れていき、容赦なく鍛えたといいます。そして、常一氏が学校に入るときには両親の反対をよそに、工業学校ではなく農学校に入れました。そこには深慮遠謀がありました。祖父は、土で瓦や壁をつくり、木で建物を建てる宮大工の仕事には、農業こそが欠かせない基礎だという信念を持っていたのです。

そんな祖父に育てられた常一氏は、やがて、火事で焼け落ちた法隆寺金堂を再建し、室町時代に戦火で失われた薬師寺金堂をも再建します。これは、代を継いで継続した努力が実った結果といえるでしょう。「夢を持ち、目標を立ててそこに向かう努力を継続するという、時代を超えた価値を持つ大切な営みの意味を、私たちも次の世代に継承していきたいものです。


出典:ニューモラル 心を育てる言葉 366日