道徳と経済は一つである


人生という言葉は「人間の生活」を意味します。人間の生活とは、「精神生活」と「物質生活」が組み合わさったものです。
精神生活とは人間の心の働きであり、それは道徳的であることが求められます。物質生活とは生活に必要な衣食住を表しており、経済生活あるいは経済活動と言い換えることもできます。
経済活動とは、収入を得るために働くことです。私たちは稼いだ 金銭によって衣食住をまかないます。つまり、「自分が生活してい くため」に経済活動を行っているのです。
これに対して道徳とは、外見的には「他人のため」に何かをすることです。そのため、自分にとって「損なこと」と思う人もいるでしょう。他の誰かがやってくれる分には構わないが、自分が道徳的な行為をして損をしてしまっては嫌だと考えるからです。とはいえ、道徳に反論すると、「不道徳な人間」だと思われます。そのため「道徳は損だからしません」とは誰も言えないわけです。
自分で育てて収穫した野菜を自分で食べるだけなら、単なる生産であって経済活動にはなりません。これを販売し、大勢の人が関わって消費者に届けられたとき、経済活動になります。経済活動において人と人とが関わる限り、道徳を忘れてはいけません。つまり、道徳と経済とは一つであるということです。


出典:「三方よし」の人間学廣池千九郎の教え105選