くよくよしないでください〜父と娘の交換日記より〜
介護度3の父と現在、交換日記をしている。まさかこの歳(58歳)になって90歳の父と交換にするようになるとは思わなかったが、コロナの影響で父が入院中の病院でも、退院後のショートステイ中の介護施設でも面会が禁止中のため、今は交換日記が、父と私の唯一のコミュニケーション手段となっている。現在、五、六冊と言ってももっぱら書いているのは渡すで、父からは「ありがとう」とか、「お母さんのことをよろしく頼む」(母は、現在、認知症)とか、ちょっとした俳句やコメントが書かれている程度である。この「くよくよしないでください」という言葉も、ある日のページに、辿々しい文字で書かれていた。どこにでもある平凡の言葉。でも私は今この言葉に励まされている。なぜなら気がつくと、くよくよ考えている自分がいるからである。
この5年間、病気がちになった父と母も看病は、私が中心になって担ってきた。フルタイムの仕事をしながらの介護は、決して十分ち言えるものではなかったと思う。
それでも、朝は5時には起きて、その日の父や母の食事を作り、出勤前に実家に届けた。仕事が終わると必要なものや、父や母がちょっと喜んでくれそうなものを買って、実家に行き、入浴のお手伝や、次の日の朝食の準備などをして、父と母が寝たのを確認して帰ると、いつも夜の9時近くにはなった。出来るだけ、父や母に寄り添った介護がしたいと、介護関係の本や体験談も10冊以上読んだりもした。それでも、疲れている時や朝の忙しいとき、トイレの失敗のあと片付けをしているときなどは、「おとうさん、おかあさん、もっとしっかりしてよ。私ばっかりたよらないでよ」と、口に出して言ってしまったこともある。いつの頃からか、私だけが父母を助けていると思ってしまったのかもしれない。
しかし、父と交換日記をするようになって、父からのなに気ない一言や、「ありがとう」言葉、そして「くよくよしないで下さい」という言葉を読んだとき、相手を助けたり励ましたりしているものは、私だけではなく父(そして母)も生きていること、そして、言葉で励まし、元気づけてくれていることを実感した。
ショートステイ中の父とは、まだ今は、コロナの関係で、直接あって話すことはできない。しかし、私は毎日、施設の玄関まで行き、ノートを交換してもらっている。そすて交換日記の中の父の言葉を読むたび、ワラシは父に守られ、励まされていることを感じ、あたたかい気持ちに包まれている。
(神奈川県・H.T/50代・女性)