正義をどこまで主張するか


正義を貫くのは、正しいことのように思えます。もちろん、間違ってはいませんし、悪いことでもありません。
しかし、正義を強く主張することによって、異なる考えを持つ人や、立場が違う人とは衝突する場合があります。固いものと固いものがぶつかり合ったとき、傷ついたり、時には割れてしまったりするように、正義と正義とのぶつかり合いは、相手を深く傷つけ、出口の見えない争いに発展してしまいがちです。

例えば、冷たく固い大理石の上に植物の種をまいても、芽を吹くことはありません。柔らかく耕した土の上に種をまけば、太陽の光と土の湿りによって、時が来ればやがて芽を吹き、花を咲かせ、実を結ぶことでしょう。この場合の大理石は正義の主張であり、柔らかい土は慈悲の施しを表しています。

相手が正義を主張するなら、こちらは慈悲の心で接するように努力しましょう。ねばり強く、相手を助けたいという温かい気持ちで相対するのです。互いに正義をふりかざして争い、傷つけ合うよりも、自分を少しだけ曲げて、慈悲の心で融和を図るほうが、よりよい世の中をつくっていけるはずです。

それでも、どうしても相手が譲らないケースに発展した場合、最後は法の正義に従うことが大切です。


出典:「三方よし」の人間学